
2023年に終了したジュニアNISA。「18歳まで引き出せない」という制限に泣かされた親は少なくないはずです。
あの制度の反省を踏まえて、2027年1月にスタートするのがこどもNISA(こども支援NISA)。引き出しは12歳から可能になり、非課税期間は無期限。ジュニアNISAの弱点がほぼ全部潰された設計になっています。
開始まであと9ヶ月。制度が始まってから調べるのでは、2027年1月のロケットスタートに間に合いません。この記事では、制度の概要から「そもそも親のNISA枠で十分じゃない?」という疑問、出口戦略まで、今のうちに知っておくべきことをまとめました。
こどもNISAは、2025年12月の令和8年度税制改正大綱で正式に決定した、18歳未満向けの非課税投資制度です[^1]。2027年1月にスタートします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象年齢 | 0歳〜17歳 |
| 年間投資枠 | 60万円(月5万円) |
| 非課税保有限度額 | 600万円 |
| 非課税保有期間 | 無期限 |
| 投資対象 | つみたて投資枠と同じ投資信託 |
| 引き出し | 12歳以降、子どもの同意があれば可能 |
| 口座管理者 | 親権者等が代理で運用 |
| 18歳到達後 | 大人向けNISAの非課税保有限度額に移管 |
ポイントは3つ。① 年間60万円まで非課税で投資できる、② 12歳以降は引き出せる、③ 非課税期間が無期限。シンプルな設計です。
ジュニアNISAは2016年に始まったものの、利用率は伸びず2023年末に終了しました。不人気の原因は明確で、こどもNISAはその弱点を正面から潰しにきています。
| 項目 | ジュニアNISA(旧) | こどもNISA(新) |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 80万円 | 60万円 |
| 非課税期間 | 5年間 | 無期限 |
| 引き出し制限 | 18歳まで原則不可 | 12歳以降OK |
| 投資対象 | 個別株・投信など幅広い | つみたて投資枠の投信に限定 |
| 非課税保有限度額 | 400万円(80万×5年) | 600万円 |
欠陥① 非課税期間がたった5年。 ジュニアNISAは5年で非課税が切れ、ロールオーバーの手続きが必要でした。「放っておけば増える」はずの長期投資と、5年で手続きが必要な制度設計は相性が悪い。こどもNISAは無期限なので、一度設定すれば触らなくていい。
欠陥② 18歳まで引き出せない。 これがジュニアNISA最大の不評ポイント。中学受験や高校入学のタイミングで使いたいのに引き出せない。こどもNISAは12歳以降、子どもの同意があれば引き出し可能。中学入学以降の教育資金として実用性が大幅に上がりました。
なお「子どもの同意」が引き出し条件になっている点には、守りの側面もあります。12歳(中学生)になれば自分の意思がはっきりするため、親が子どもの資産を勝手に引き出すことが法的に難しくなる。つまり、教育資金として正当に使う分には問題ないが、親の都合で流用するのは制度上も法律上もブレーキがかかる設計です。「子どもの名義で貯めたお金は子どものもの」という原則を、制度の仕組みで担保しています。
欠陥③ 投資対象が広すぎて迷う。 ジュニアNISAは個別株も買えましたが、子どもの資産で個別株はリスクが高い。こどもNISAは「つみたて投資枠対象の投資信託」に限定。選択肢が絞られたことで、かえって初心者の親は迷わなくて済むようになりました。
ここで、詳しい人なら必ず思う疑問があります。「大人のNISAは1人1,800万円、夫婦で3,600万円の枠がある。わざわざ子どもの口座を作る必要ある?」
正直な答えを言うと、NISAの枠を使い切れていない家庭なら、親の枠で運用する方がシンプルです。管理口座が増えないし、引き出しの制限もない。
それでもこどもNISAを使うメリットがあるのは、主に3つのケースです。
ケース① 夫婦のNISA枠をすでに使い切りそうな家庭。 夫婦で年間360万円×2=720万円の投資をしている場合、こどもNISAの年間60万円は純粋な非課税枠の上乗せになります。
ケース② 子ども名義で資産を分けておきたい場合。 将来の贈与税対策として、最初から子ども名義で運用しておく方が資産の帰属が明確になります。18歳で大人のNISA枠に移管されるので、「子どもが社会人になったときの元手」としても使えます。
ケース③ 子どもの金融教育として。 自分名義の口座に資産がある、という経験は金融リテラシーの教材になります。12歳以降は子どもの同意が必要な設計も、「自分のお金を自分で判断する」練習になるよう意図されています。
逆に言えば、上のどれにも当てはまらないなら、親のNISA枠で運用する方が合理的。こどもNISAは「あったら使う」くらいの温度感でOKです。
迷ったら、以下の順番で考えてみてください。
Q1. 夫婦のNISA枠(計3,600万円)を使い切る予定がある? → YES → こどもNISAを併用するメリットが大きい。年60万円の非課税枠が純粋に上乗せされます。 → NO → Q2へ。
Q2. 教育資金を「子どもの名義」として明確に分けておきたい? → YES → こどもNISAを使いましょう。贈与税の整理がしやすく、18歳以降は子ども自身のNISA枠に移管されます。 → NO → Q3へ。
Q3. 将来、そのお金を老後資金など教育以外に転用する可能性がある? → YES → 親のNISA枠で運用する方が柔軟。引き出しに子どもの同意も不要です。 → NO → どちらでもOKですが、管理のシンプルさでは親のNISA枠に軍配が上がります。
こどもNISAの上限は年間60万円(月5万円)。でも「毎月5万円は厳しい」という家庭も多いはず。月額別のシミュレーションを見てみましょう。
| 月額 | 上限到達 | 積立総額 | 18歳時の評価額 | うち運用益 |
|---|---|---|---|---|
| 月5万円 | 10年目 | 600万円 | 約1,157万円 | 約557万円 |
| 月3万円 | 16年8ヶ月目 | 600万円 | 約694万円 | 約94万円 |
| 月1.5万円 | ─(上限未到達) | 324万円 | 約524万円 | 約200万円 |
| 月1万円 | ─(上限未到達) | 216万円 | 約349万円 | 約133万円 |
※年利5%で計算[^2]。月5万円・月3万円は非課税保有限度額600万円に到達後、追加投資なしで運用のみ継続した場合。
月5万円で600万円をフル活用すれば、18歳時点で約1,157万円。 運用益の557万円に対して、通常なら約113万円の税金がかかりますが、こどもNISAではゼロ。
一方で月1万円でも、18年間続ければ約349万円。大学入学金(私立で平均約25万円)+初年度授業料(私立文系で平均約82万円)をカバーできる金額です。
シミュレーションは年利5%の想定ですが、当然、18歳の入学直前に暴落が来る可能性もあります。2024年8月の「令和のブラックマンデー」では日経平均が1日で12%以上下落しました。
「ちょうど使いたいタイミングで元本割れ」──これを避けるために、出口戦略を事前に決めておくことが重要です。
戦略① 使う2〜3年前から段階的に現金化する。 大学入学資金として使う予定なら、15歳から少しずつ売却して預貯金や債券ファンドなど値動きの少ない資産に移していく。具体的には、15歳で3割、16歳で3割、17歳で残りを売却するイメージ。一括で売るとタイミングリスクが大きいですが、3回に分けておけば、仮に1回目の売却後に暴落が来ても、残りの7割はまだ回復を待てます。
戦略② すぐに使わないなら、18歳以降も運用を続ける。 こどもNISAの資産は18歳で大人のNISA枠に移管されます。大学の学費は親が払う予定で、子どもの資産は社会人の元手にする、という計画なら、暴落があっても慌てて売る必要はありません。
戦略③ 教育資金の「全額」をこどもNISAに入れない。 確実に必要な入学金や初年度の学費は預貯金で確保し、こどもNISAは「あればプラスになる上乗せ資金」と位置づける。こうしておけば、暴落が来ても生活設計が崩れません。
「投資に回す余裕がない」という家庭におすすめなのが、児童手当をそのままこどもNISAに入れる方法です。
2024年10月からの児童手当は、所得制限なしで全世帯が受給できます[^3]。
| 子どもの年齢 | 月額 |
|---|---|
| 0〜2歳 | 15,000円 |
| 3歳〜高校生 | 10,000円 |
| 第3子以降(0〜高校生) | 30,000円 |
たとえば第1子の場合、0〜2歳の3年間は月15,000円、3歳以降は月10,000円。これを18年間すべてこどもNISAに入れると、積立総額は約216万円、年利5%の試算で約380万円になります。
児童手当は口座に振り込まれた時点で生活費に混ざってしまいがちですが、最初から「こどもNISAに入れる」と決めてしまえば、家計を圧迫せずに子どもの資産形成ができます。
こどもNISAのスタートは2027年1月。まだ口座開設はできませんが、今のうちにやれることがあります。
こどもNISAの口座は、親と同じ金融機関で開設することになる可能性が高いです[^4]。まだ証券口座を持っていないなら、今のうちにネット証券で口座を開設しておきましょう。
上限は月5万円(年60万円)ですが、無理なく続けられる金額を事前に決めておく。児童手当を回すなら月1〜1.5万円、追加で出せるなら月3万円、フル活用なら月5万円。家計のシミュレーションを今のうちにやっておくと、制度が始まったタイミングですぐ動けます。
こどもNISAの対象商品は、つみたて投資枠と同じ投資信託。具体的な商品ラインナップは各証券会社から2027年以降に発表されますが、全世界株式インデックス(オルカン)やS&P500連動ファンドが候補の中心になるはずです。今のうちに大人のNISAで少額からインデックス投資を始めておくと、商品選びで迷わなくなります。
実際に新NISAを始めている人が月いくら積み立てているか気になる方は、年代別の中央値をまとめたこちらも参考にしてみてください。
Q. こどもNISAとは何?いつから始まる?
→ 0〜17歳向けの非課税投資制度。2027年1月スタート。年間60万円まで投資でき、運用益は非課税です。
Q. ジュニアNISAと何が違う?
→ 非課税期間が無期限、引き出しが12歳から可能、投資対象がつみたて投信に限定。ジュニアNISAの3つの欠陥がほぼ解消されています。
Q. 親のNISA枠で十分じゃない?
→ 枠を使い切れていない家庭ならそれも合理的。ただし夫婦の枠がすでに埋まりそうな場合、贈与税対策、子どもの金融教育を重視するなら、こどもNISAに追加のメリットがあります。
Q. こどもNISAで18歳までにいくら貯まる?
→ 月5万円で0歳から始めれば、18歳時点で約1,157万円(年利5%試算)。月1万円でも約349万円。ただし使う2〜3年前から段階的に現金化するなど、出口戦略を事前に決めておくことが重要です。
これから子どもが生まれる・生まれたばかり派 → 最大18年間の複利効果を使えるベストタイミング。まず親のNISA口座を2026年中に開設しておきましょう。児童手当をそのまま投資に回すだけで、追加負担ゼロで始められます。
子どもが小学生以上派 → 投資期間は短くなりますが、それでもメリットはあります。月1〜3万円の積立でも、中学〜高校の教育資金の足しに。 12歳以降は引き出せるので、使いたいタイミングで活用できます。
教育費の準備方法を迷っている派 → 学資保険とこどもNISAの最大の違いは「利回り」。学資保険の返戻率は105〜110%程度ですが、インデックス投資の長期期待リターンはそれを上回ります。ただし元本保証はないので、入学金など確実に必要な資金は預貯金、上乗せ分をこどもNISAという組み合わせが現実的です。
わが家は教育費にいくらかけていい?と迷う派 → 児童手当を回すのが鉄板ですが、「そもそも今の自分の貯金ペースはどうなの?」と思ったら、まず同世代の平均と中央値を確認してみましょう。自分の立ち位置がわかると、教育費へ回す金額の判断もしやすくなります。
