
「年収1000万円」。この数字には、どこか特別な響きがありますよね。ところが実際に到達した人ほど、「思っていたほど残らない」と言います。豪華な生活を想像していたのに、フタを開けてみれば意外と普通だった、と。
これは謙遜でも自慢でもなく、単純に数字の問題です。年収1000万円の世界がどれくらい狭くて、そこから何がどれだけ引かれるのか。国税庁のデータをもとに、順番に確認していきます。
先に結論をお伝えします。 年収1000万円は、給与所得者のなかで上位6.2%。100人に6人、給与所得者5,136万人のうちおよそ320万人しかいない水準です[^1]。年収の中央値413万円の約2.4倍。ただし手取りは概算で約730万円で、270万円が引かれます。これが「思ったより残らない」の正体です。
まずは分布から確認します。1年を通じて勤務した給与所得者は5,136万人。そのうち年収1000万円を超える人は何人いるのでしょうか[^1]。
| 年収の階級 | 人数 | 構成比 | この金額より上の割合 |
|---|---|---|---|
| 700超〜800万円 | 271万人 | 5.3% | 12.0% |
| 800超〜900万円 | 174万人 | 3.4% | 8.6% |
| 900超〜1000万円 | 121万人 | 2.4% | 6.2% |
| 1000超〜1500万円 | 231万人 | 4.5% | 1.7% |
| 1500超〜2000万円 | 58万人 | 1.1% | 0.6% |
| 2000万円超 | 32万人 | 0.6% | — |
1000万円を超える人は上位6.2%。人数にすると、231万人+58万人+32万人で約320万人です。
100人が集まる会社なら、6人。学年に200人いる高校なら、その学年から12人。そのくらいの割合だと考えると、「珍しいけれど、まったく見かけないほどではない」という感覚に近いかもしれません。
なお、この数字は給与所得者に限った話です。自営業者や役員報酬のみで生計を立てている人は含まれていません。
年収の中央値、つまり日本の給与所得者のちょうど真ん中は413万円です[^1]。1000万円はその約2.4倍にあたります。
| 指標 | 金額 | 1000万円は何倍か |
|---|---|---|
| 年収の中央値 | 413万円 | 2.42倍 |
| 年収の平均 | 478万円 | 2.09倍 |
| 正社員の平均 | 545万円 | 1.83倍 |
| 55〜59歳の平均給与 | 572万円 | 1.75倍 |
注目したいのは最後の行です。国税庁の年齢階層別データで最も平均給与が高いのは55〜59歳の572万円。年代別の平均が最も高いところですら、1000万円の6割弱の水準です。つまり1000万円は、年齢を重ねれば自然に到達する数字ではありません。
年収の中央値がなぜ413万円になるのか、平均478万円との違いも含めてこちらで解説しています。
ここからが本題です。年収1000万円の手取りは、当サイト共通の概算ルールで約730万円、月あたり約60.8万円が目安です[^2]。
額面1000万円に対して、270万円が差し引かれる計算になります。内訳は社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)と、所得税・住民税です。月あたりに直すと、毎月22.5万円が手元に届く前に消えていることになります。
| 項目 | 年額 | 月額 |
|---|---|---|
| 額面年収 | 1000万円 | 約83.3万円 |
| 差し引かれる額 | 約270万円 | 約22.5万円 |
| 手取り | 約730万円 | 約60.8万円 |
年収の中央値413万円の人は、差し引かれる額が概算で約88万円。1000万円の人はその約3倍を負担していることになります。「1000万円プレイヤー」という言葉から想像される暮らしと、実際に使える月60.8万円とのあいだにギャップが生まれるのは、この270万円のためです。
手取りの中央値がいくらなのかは、こちらで詳しく確認できます。

「思ったより残らない」をもっとはっきり示すのが、手取り率の推移です。額面に対して手元に残る割合が、年収帯ごとにどう変わるかを並べます[^2]。
| 額面年収 | 手取りの目安 | 手取り率 | 月あたり |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約240万円 | 約80% | 約20.0万円 |
| 400万円 | 約320万円 | 約80% | 約26.7万円 |
| 413万円(中央値) | 約325万円 | 約79% | 約27.1万円 |
| 500万円 | 約390万円 | 約78% | 約32.5万円 |
| 600万円 | 約460万円 | 約77% | 約38.3万円 |
| 700万円 | 約530万円 | 約76% | 約44.2万円 |
| 800万円 | 約600万円 | 約75% | 約50.0万円 |
| 1000万円 | 約730万円 | 約73% | 約60.8万円 |
年収300万円では約80%が残るのに、1000万円では約73%まで落ちます。所得税が、所得が高いほど税率も上がる仕組みになっているためです。
具体的に見てみましょう。年収800万円から1000万円へ、額面で+200万円上がったとき、手取りの増加は600万円→730万円で+130万円。増えた分のうち手元に残るのは約65%です。年収300万円台では8割が残っていたことを考えると、伸び方の差は明らかです。
額面の数字は倍以上になっても、体感が倍にならないのは、この構造があるからです。
年収700万円の段階でこの鈍化がどう始まるかは、こちらで解説しています。
年収1000万円が上位6.2%だとすれば、その先はどうなっているのか。ここが分布のいちばん面白いところです。
| 年収 | この金額より上の割合 | おおよその人数 |
|---|---|---|
| 700万円 | 17.3% | 約890万人 |
| 1000万円 | 6.2% | 約320万人 |
| 1500万円 | 1.7% | 約90万人 |
| 2000万円 | 0.6% | 32万人 |
1000万円から1500万円までのあいだで、対象になる人は6.2%から1.7%へ。およそ4分の1に減ります。さらに2000万円を超える人は0.6%=約32万人しかいません。1000人に6人という世界です。
このように、分布の上のほうは急激に細くなっていきます。統計ではこの形を「裾が長く、細い」と表現します。年収の平均478万円が中央値413万円より高くなるのも、この細い尻尾に位置する人たちが平均を押し上げているからです。
言い換えれば、平均という指標は、この6.2%の存在によって上振れしているということです。だからこそ、自分の位置を知るには中央値を見るほうが実感に合います。
最後に、数字の受け止め方についてです。
年収1000万円は分布上たしかに上位ですが、それが「余裕のある暮らし」を意味するかは別の話です。手取り月60.8万円から、住居費・教育費・保険料などの固定費が引かれます。都市部の住居費や、子どもの教育費が重なる時期には、金額の大きさほど余裕が生まれないこともあります。
一方で、この年収帯だからこそ意味を持つ選択肢もあります。年間で270万円が税と社会保険料に回っている以上、課税対象の所得を圧縮できる制度や、非課税で運用できる制度の効き目は相対的に大きくなります。ただし投資には元本割れの可能性があり、制度の枠や条件も人によって異なります。
実際にみんながいくら積み立てているのか、その実態はこちらで確認できます。
大切なのは、上位6.2%だから安心とも、思ったより残らないから残念とも決めつけないこと。額面ではなく、手取りと固定費の関係で家計を見る。それはどの年収帯でも変わりません。
もう一段下、年収600万円の位置づけはこちらで解説しています。
貯金・年収・給料の中央値をまとめて確認したいときは、こちらの早見表が便利です。自分に近い「等身大の基準」がひと目でわかります。

Q. 年収1000万円は上位何%ですか?
給与所得者のなかで上位6.2%にあたります。100人に6人、人数にすると給与所得者5,136万人のうち約320万人です。国税庁の給与階級別の人数分布から算出した推計値です。
Q. 年収1000万円の手取りはいくらですか?
概算で約730万円、月あたり約60.8万円が目安です。額面から約270万円が社会保険料と所得税・住民税として差し引かれる計算になります。
Q. なぜ「1000万円でも残らない」と言われるのですか?
手取り率が下がるためです。年収300万円では額面の約80%が残りますが、1000万円では約73%まで落ちます。所得が高いほど所得税の税率も上がる仕組みだからです。
Q. 年収1500万円や2000万円はどのくらいの割合ですか?
1500万円を超える人は上位1.7%、2000万円を超える人は0.6%でおよそ32万人です。1000万円から上は、金額が上がるにつれて人数が急激に少なくなります。
本記事の「上位◯%」および人数は、国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」の給与階級別の給与所得者数をもとにした推計値です。対象は1年を通じて勤務した給与所得者5,136万人で、パート・アルバイトを含む一方、自営業者、役員報酬のみの人、年の途中で退職した人は含まれていません。したがって「日本の全就業者のなかで上位6.2%」ではなく、あくまで給与所得者のなかでの位置づけです。「年収」は給与と賞与の合計で、副業収入や資産収入は含みません。
手取りの金額と手取り率は、すべて当サイト共通の概算ルールによる目安です。実際の手取りは、扶養親族の有無、居住する自治体、年齢(40歳以上は介護保険料が加わります)、勤務先の社会保険の種類、各種控除の利用状況によって大きく変わります。「270万円が引かれる」という数字も、この概算表から導いた目安であり、内訳の正確な金額を示すものではありません。ご自身の実額は源泉徴収票と住民税決定通知書で確認してください。
[^1]: 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」(令和7年9月公表)。1年を通じて勤務した給与所得者5,136万人が対象。本記事の「上位◯%」および年収の中央値は、同調査が公表する給与階級別の給与所得者数から、各階級内で人数が均等に分布すると仮定して当サイトが算出した推計値です。人数は同調査の給与階級別人数を合計したものです。
[^2]: 手取りは額面から社会保険料(約15%)と所得税・住民税を差し引いた概算です。当サイト共通の目安であり、扶養親族の有無、居住する自治体、年齢によって実際の金額は変わります。手取り率および「差し引かれる額」は、この概算表から当サイトが算出したものです。